バッテリーが熱を持つとき

街のあちこちで、電動自転車を見かけるようになった。保育園の送り迎えも、買い物の帰り道も、みんな当たり前のようにまたがっている。
けれどこの夏のように照りつける日差しの中では、その「当たり前」がふと気にかかる。

自転車のフレームに取り付けられた黒いバッテリーが、じわじわと熱を溜め込んでいるように見える。触れれば火傷しそうなほどの気温のなかで、これがずっと直射日光にさらされているのは大丈夫なんだろうか――そんな疑問が、頭をよぎる。

最近、バッテリーにまつわる事故のニュースをよく見かける。発火や爆発という最悪のケースもあるけれど、そこまでいかなくても、「異常に熱くなる」というだけで、かなりのストレスだ。
不具合かもしれない。暑さのせいかもしれない。どちらにしても、自分の手の中にあるものが、静かに熱を帯びるという現象には、どうしても不安がつきまとう。

とはいえ、バッテリーはあまりに身近になった。スマホもPCも、イヤホンもスピーカーも。
最近では、「有線接続が基本ですよ」と謳っている製品でさえ、「非常時のためにバッテリー内蔵です」と付け足されていることがある。
親切心なのかもしれない。でもその機能を「無効にする」選択肢が用意されていないのは、ちょっと困る。

実際、私が使っているスピーカーにも、そういう“おまけのバッテリー”がついていた。普段は据え置きで使っていて、電源ケーブルはずっと挿しっぱなしだ。モバイル用途で使う予定もないし、バッテリーの状態を把握する手段もない。
なのに、内部には熱を溜める可能性のある部品が、ひっそりと組み込まれている。

もちろん、技術的には問題ないのかもしれない。発火温度にはまだ余裕があるのかもしれない。
それでも、「知らないうちに高温になっているかもしれない」という事実だけで、どこか落ち着かない。

暑さは、体だけでなく、物にも負荷をかける。
だからこそ、熱を抱えたものにもう少しだけ慎重になっていたい――そんなふうに思うようになったこの頃。
便利さの裏に潜む熱を、日陰に置くくらいの気持ちで扱えたら、少しだけ安心していられる気がする。