夏の午後、部屋の中がじんわりと暑い。エアコンは効いているはずなのに、なぜか空気がだるい。手をかざしてみると、窓際のカーテンの向こうから、もわっとした熱気が伝わってくる。
ああ、これはもう、カーテンの限界かもしれない――そう思ったのが、断熱・遮熱カーテンを探し始めたきっかけだった。
こういう機能性カーテンは、調べはじめると沼のように深い。
「遮光」「遮熱」「断熱」それぞれが微妙に違っていて、単なる色の濃さでは判断できない。裏地が白いもの、アルミコーティングがされているもの、生地の厚みで勝負しているもの。結局のところ、何を優先すべきかは、暮らしている環境次第なのだろう。
私の部屋は南向きで、昼を過ぎると日差しがどんどん鋭くなる。とくに夏場は、窓ガラス越しに太陽と向き合っているようなものだ。
カーテン一枚でどこまで防げるのか、少し半信半疑ではあったけれど、それでも何もしないよりはいいと思い、評判のよさそうなものを一つ選んだ。
届いたカーテンは、思っていたよりも軽く、手触りはさらっとしていた。見た目の印象は、どちらかといえば“地味”。でも、窓に吊るしてみると、それまでのふつうの布よりも、明らかに熱のこもり方が違う。
完全に防げるわけではない。けれど、空気がひと呼吸、穏やかになったような感触がある。
こういう小さな改善は、体感としては微妙なことが多い。
温度が1〜2度下がったところで、劇的に快適になるわけではない。けれど、その「1〜2度」が、作業に集中できるか、汗ばんで落ち着かないかの境界線だったりする。
そしてなにより、「できるだけ工夫してみた」という気持ちが、自分にとっての安心につながっている気がする。
もちろん、カーテンひとつで夏が変わるわけじゃない。
もっと効果的な方法もあるのかもしれないし、気候変動という大きな流れに対しては、無力に思える瞬間もある。
でも、それでも窓の向こうにそっと抵抗を差し出すような気持ちで、カーテンを選んだ日を、私はたぶん忘れないと思う。
あとは、秋が来るのを静かに待つだけだ。