先日「サブスクに慣れて小説が遠のいた」という話を書いた。映画やドラマを一気見できる便利さと、作品単価の安さに慣れてしまったせいで、小説を手に取る回数がめっきり減った、というあれだ。
でもその直後、なんだか自分でも妙に気になってしまって、久しぶりに本屋へ足を運んだ。そして思い切って、前から気になっていた作家の新作を買ってみた。単行本だから値段はサブスク1〜2ヶ月分。それでもレジで本を受け取ると、なんだかちょっと誇らしいような気分になった。
久しぶりに紙のページをめくりながら読むと、やっぱり小説には小説にしかない時間があると感じた。映像作品みたいにテンポよく進まないからこそ、ふとした一文に引っかかって立ち止まれる。余白に自分の想像を差し込める。サブスクで次々と作品を消化しているときには味わえない「間」みたいなものが、そこにはあった。
もちろん、コスパで考えたら勝ち目はない。たった一冊でサブスク数十本分の映像作品と張り合うなんて無理がある。でも読み終わったあと、静かに残る余韻や、自分の頭の中にだけ浮かんだ景色は、他では得られない。
前回は「小説が遠のいた」としみじみ書いたけれど、今回買った一冊を読み終えてみて、距離を置いていたからこそ改めて「やっぱりいいな」と思えた。そんな再発見の一週間だった。