二台目のモバイルモニター

出先で使う用に、モバイルモニターを買い足そうと思った。すでに一台、安価なモデルを持っているのだけれど、最近どうにも不満が募ってきた。画面がやや青白く、文字の輪郭が滲んで見える。最初は「こんなものか」と思っていたのに、一度気づくともう戻れない。

スペック表とレビューを行き来するうちに、「これなら間違いなさそうだ」と思える製品が見つかった。解像度も、色の正確さも、レビューの語り口までもが落ち着いていて、どこか信頼できる雰囲気がある。必要かと問われれば、いま手元にモニターはある。でも、満足しているかといえば、たぶん違う。

ガジェットというのは、つくづく感情の買い物だと思う。用途を洗い出し、理性で整理したつもりになっていても、最後のひと押しはたいてい「気持ち」だ。「これなら長く使えそう」と思えるか。所有していて心地よいか。その感覚がちゃんとあるかどうかで、あとからの満足度がまるで違ってくる。

「二台目」が難しいのは、経験があるぶん冷静になりすぎるからだ。初めてのときは知らないことだらけで、とにかく動けば感動があった。ところが二台目は、知ってしまっている。安物の落とし穴も、過剰な期待の行き先も。それでもやっぱり、もう少し良いものが欲しくなる。今度こそ、妥協しない一台を、と。

そして、それが最後の一台になるとも限らない。レビューを読み、動画を見て、スペックを比較する夜の時間がまた始まる。それでも、そんな遠回りの中にしか、ほんとうに納得のいく選択肢は現れないのかもしれない。

結局、その製品は今は在庫切れだった。しばらくは買えそうにない。それでも不思議と、焦りはなかった。もう少しだけ、この「まだ選んでいない時間」を味わっていたい、そんな気持ちさえある。思いがけず愛着が湧いてきた今の一台にも、もう少しだけ寄り添ってみようと思った。