デスク周りの配線整理にこだわっていた時期がある。
ケーブルの長さを細かく測って、ぴったりのサイズを注文し、背面のトレーに沿わせて結束バンドで固定する。終わった直後は、工事現場の電線みたいに無駄がなくて、それはもう気持ちよかった。
けれどその美しさは長続きしない。新しいデバイスを買い足したり、古いものを手放したり、あるいは単に位置を変えたくなったり。そのたびに、あのガチガチに固定した配線が立ちはだかる。いざ引っ張り出そうとすると、最初に描いた「完璧なルート設計」が邪魔をするのだ。
整理すればするほど、身動きが取りづらくなる――。
なんだか皮肉な話だが、それが配線整理の現実だった。
そこで発想を変えてみた。ぴったりサイズのケーブルをやめ、少し長めを選んで余った分はケーブルトレーに押し込む。結束も、ゆるくまとめる程度。遠目から見ればそれなりに整っているし、裏をのぞけば大ざっぱな実態が隠れている。
でも、この「ほどほど」が驚くほど快適だった。
新しいガジェットをつなぐときも、古いケーブルを抜くときも、わざわざ結束を外す必要がない。多少の遊びがあるおかげで、変化に柔軟に対応できる。
思えばデスク環境づくりに“完成形”なんてない。物欲も、好みの変化も、ちょっとした試行錯誤も、いつまでも続く。だからこそ、完成度を突き詰めすぎるより「動かしやすさ」を優先した方が、むしろ長い目で見ればきれいに保てる。
配線整理は、几帳面さではなく“ゆるさ”で決まる。そう気づいてから、デスクの裏をのぞくたびに気分が軽い。